まずは以下の画像をご覧ください。
こちらは、独立行政法人大学入試センターが実際に公開している、情報1の共通テストの試作問題の一部です。
筆者を含め、今回の学習指導要領改定以前に高校での学習を終えていた世代は、以上の問題を見ても、まったく理解できないと思います。
このように、情報1ではこれまでの情報学習では身につけてこなかったような、より専門的で実践的な知識やスキルが求められるため、情報1について正確に知っておきたいと考える方は非常に多いはずです。
- 情報1の概要
- 情報1が「必修科目」に設定された経緯やねらい
- 情報1で学ぶ4つの単元の解説
- 情報1の共通テストにおける出題のされ方
そこでこの記事では、情報1にまつわる以上の点について、現役講師の視点でわかりやすく、網羅的に解説していきます。
情報1について知りたい方や共通テストにおける扱い方について興味がある方は、参考にしてください。
私たち「まなぶてらす」は2016年からオンライン家庭教師サービスを提供しています。専門的な知識と経験に基づいて、勉強に関する情報をわかりやすく解説します!
情報1とは?
情報1とは、2022年度から高校生の授業で取り扱っている、インターネットやプログラミングなど、これからの時代を生きるために不可欠な情報処理の知識やスキルを身につけるための科目です。
また、共通テスト(旧センター試験)においては2025年度から新設科目として設置されることが決定しており、国立大学を中心に受験科目として設置する大学も出てきています。
出典:共通テスト「情報I」、国立大3校が「配点しない」…25年実施新科目の扱いに差 – 読売新聞オンライン
情報科目の必修化は「2003年から」
情報1が新設され、さらに共通テストで取り扱われることが決まってから、全国で「情報が必修化になった」と叫ばれていますが、実はこれは誤解です。
というのも、情報科目自体は2003年から必修とされており、これまでの世代でも情報の取り扱い方やOfficeなどのパソコンスキルについて学んでいたはずです。
したがって、現在は情報1の指導が始まってから初期段階ということもあり、「情報1に関する情報」が錯綜している状態です。
「共通必履修科目」に採用されたのは今回の「情報1」が初めて
情報1が「必修化された」といわれている背景を確認していきましょう。
以上の画像のように、2003年の時点で情報科目として新設されており、その時点では「情報A/B/C」を各学校が選択する形でした。
その後、2013年における学習指導要領の改訂にて、「情報の科学/社会と情報」の2つに整理され、これも各学校の選択に委ねられています。
そして、2022年の学習指導要領の改訂にて、これまでの選択制が見直され「情報1」という形で統一されています。
このように、選択制から1つの科目に変わったことで「必修科目」になったといわれていますが、厳密にはこれは「共通必履修科目」と扱われます。
いずれにせよ、これまでの情報教育では各学校に学ぶ科目、領域が委ねられていましたが、これからはそれが統一される形に整備されました。
情報1が「共通必履修科目」に設定された経緯やねらいとは?
次に、情報1が共通必履修科目に設定された経緯やねらいについて解説していきます。
情報1が「共通必履修科目」に設定された経緯
情報1が共通必履修科目に設定された経緯のキーワードは「Society5.0」です。
情報1の学習指導要領には以下のような記載があります。
進化した人工知能(AI)が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されるIoTが広がったりするなど、Society5.0とも呼ばれる新たな時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測もなされている。
ご覧のように、Society5.0と呼ばれる新たな時代の到来に備え、従来の情報教育をアップデートする必要性があることを示唆しています。
では、Society5.0とはどういった社会を指すのでしょうか?
内閣府は、以下のようにSociety5.0を説明しています。
我が国が目指すべき未来社会の姿であり、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会です。
すなわち、狩猟社会、農耕社会、工業社会、そして情報社会と続いてきた社会のシステムの最新バージョン、それがSociety5.0ということです。
Society5.0では「サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)を高度に融合したシステム」が社会を支配するため、このシステムに適合しなければ生きる力を養うことができません。
こうした社会の急激な変化に対応すべく、今回、情報1を共通必履修科目として設定したことが伺えます。
情報1のねらいとは?
では、情報1では具体的にどのようなねらいがあるのでしょうか?
学習指導要領には、以下の3つの資質、能力の育成を目指すことが記載されています。
(1)効果的なコミュニケーションの実現,コンピュータやデータの活用について理
解を深め技能を習得するとともに,情報社会と人との関わりについて理解を深め
るようにする。
(2)様々な事象を情報とその結び付きとして捉え,問題の発見・解決に向けて情報
と情報技術を適切かつ効果的に活用する力を養う。
(3)情報と情報技術を適切に活用するとともに,情報社会に主体的に参画する態度
を養う。
簡潔にまとめると、以下のようになります。
- コンピューターやデータを扱うスキルを身につける
- 情報や情報技術を活用する力を身につける
- 情報社会に参加する態度を身につける
パソコンやスマートフォンを用い、情報が無限に溢れる現代において、以上のようなスキルや態度を身につけることはなくてはならないことです。
そして、これまでの情報科目では、現代のような高度な情報社会に適応することは難しかったため、情報1を通じてすべての子どもたちが学習をする必要がある。
だからこそ、今回情報1が「共通必履修科目」として設定されたといえるでしょう。
情報1で学ぶ「4つの単元」とは?それぞれの詳細を解説
情報1では、学習指導要領をベースに以下の「4つの単元」が用意されています。
- 情報社会の問題解決
- コミュニケーションと情報デザイン
- コンピュータとプログラミング
- 情報通信ネットワークとデータの活用
それぞれの単元でどのようなことを学ぶのかを理解すれば、情報1の全体像が見えてくるはずです。
以下では、「日本文教出版」が取り扱う教科書を参考にしながら、詳しく解説します。
【1章】情報社会の問題解決
- 情報の特性、メディアの特性
- 問題解決の考え方
- 法の重要性と意義(著作権、個人情報)
- 情報社会と情報セキュリティ
- 情報技術の発展による変化
4つの章があるうちの第1章では、私たちが暮らす「情報社会」の概要をつかみながら、そのなかでどのように問題解決をするのかについて、以上の点を中心に学びます。
また、問題解決のために学ぶ技法は、文書作成ソフト(Word、Googleドキュメント)、プレゼンテーションソフト(PowerPoint、Gooleスライド)、表計算ソフト(Excel、Googleスプレッドシート)について学び、実践的なスキルを身につけます。
【2章】コミュニケーションと情報デザイン
- インターネットの発展
- 情報機器のパーソナル化とソーシャルメディア
- コンピュータとデジタルデータ
- 文字、音、画像、動画のデジタル化
- 情報デザインのプロセスと問題の発見
- デザインの要件と設計・試作
第2章では、以上のような情報機器やソフトを使ったコミュニケーションやデザインについて学びます。
これからの時代はWebサイトやSNSが社会の中心となることは明らかであり、そうした場におけるコミュニケーション、デザインについて学ぶことは欠かせません。
問題解決のための技法は、HTMLやCSS、JavaScriptといったプログラミングの基本的な点について学びます。
【3章】コンピューターとプログラミング
- コンピュータのしくみ
- 2進法による計算
- アルゴリズムの基本と表現方法
- アプリケーションの開発
- モデル化とシミュレーション
- コンピュータを利用したシミュレーション
3章では、情報1の「主役」とも呼べるプログラミングを含む、以上の点について学びます。
コンピューターがどのように動作しているのかを体系的に理解することで、利用する側から「作る側」へとシフトできるような土台を培うことがねらいです。
技法としては、現代プログラミングで極めて重要な位置を占める「Python」を扱い、プログラミングの基本を確実に理解、定着させます。
【4章】情報通信ネットワークとデータの活用
- コンピュータネットワーク
- プロトコル
- 暗号化のしくみ
- データベース管理システムとデータモデル
- 数値データ、テキストデータの分析
最後となる4章では、ネットワークの仕組みとデータの活用について学びます。
アンケート調査によるデータ収集の手法や統計的な検定を技法として取り入れるため、数IAで学ぶ確率や統計の知識とのつながりも試されるといえるでしょう。
情報1は共通テストでどのように出題される?
情報1は共通テストでどのように扱われ、出題されるのか、気になる方も多いはずです。
先述のように、独立行政法人大学入試センターにより試作問題が発表されており、4つの大問が出題されることがわかっています。
実際に試作問題を使って全体像を把握していきましょう。
第1問:小問集合
第1問は小問集合で、各単元を横断するように小問が出題されます。
以上の画像のように、「SNSなどの使い方」など、情報1を一通り学んでいるなら解けるような基礎的な問題が中心となるため、しっかりと点数を取っておきたい単元です。
第2問:中問2つ
第2問では、中問2つが用意されます。
どの単元からどのような問題が出題されるのかは、おそらく年によって異なるはずです。
試作問題では、対話形式によるQRコードに関する問題と、相対度数や累積相対度数を使った統計の問題が出題されています。
後者の統計の問題は数IAと関連した問題であるため、数学的な知識、技能も要求されるといえるでしょう。
第3問:プログラミング
第3問では、プログラミングに関する問題が出題されています。
情報1で取り上げる中では最も専門的な領域ということもあり、毎年大問扱いで出題される可能性があるため、対策は必須です。
第4問:データの活用
第4問では、データの活用が出題されています。
「箱ひげ図」「相関係数」といった、従来の世代では学んでいないような領域からの出題となりますが、今の世代は中学数学から高校の数IAまでですでに学んでいる領域です。
したがって、中高数学を一通り学び、定着ができているなら、それほど対策は難しくありません。
逆にいえば、情報1の試験対策の上では数学的知識が求められるため、科目横断的な対策が必要になるといえます。
情報1の専門的な指導なら「まなぶてらす」におまかせください
情報1が共通必履修科目として採択されてからまだ時間が経過していないこともあり、指導現場、入試作成は手探りで進んでいる感が否めません。
こうしたなかで、将来へとつながる「Society5.0を生きる力」を身につけるには、専門的な知見を持っている指導者に教えを仰ぐ必要があるでしょう。
私たち「まなぶてらす」は、2016年よりオンライン家庭教師サービスを提供しており、情報1の指導にもいち早く対応しております。
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