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【最新版】中学英語の教科書改訂が過去最大規模に!現役講師が変更点を徹底解説

【最新版】中学英語の教科書改訂が過去最大規模に!現役講師が変更点を徹底解説

世界的に急激なグローバル化が現在進行形でどんどん進んでいる今、日本の英語教育も大きく変化しています。

特に中学生で学習する「中学英語」の変化は凄まじく、2021年から教科書に大幅な改訂が入りました。学習方針から単語のボリューム、英文法など、極めて大きなアップデートがされているため、「どんな変化があったのか具体的に知りたい」という方も多いと思います。

そこでこの記事では、「中学英語の教科書改定」をテーマとして、具体的な変更内容に加え、変化に対応するための対策方法についても解説していきます。

オンライン家庭教師として現場で働いていると、多くの保護者から「英語が昔と全然違う」と相談を受けます。この記事だけでなく、英語のスペシャリストが解説した「動画」でも解説しているので、合わせてチェックしてみてください。

2021年実施の学習指導要領改定による中学英語の変更点とは?

英語だけでなく、幼稚園から高校までで教科書で学ぶ内容は、「学習指導要領」によって定められています。

まずは、学習指導要領や教科書の改訂内容を以下の観点にわけてまとめてみました。

中学英語の改訂内容まとめ
授業時間 ・変化なし
・学習内容の増加とは対照的
学習方針 ・4技能5領域をバランス良く
・より実践的な内容へシフト
単語 ・最大1.5倍へと増加
・過去最大のボリュームに
英文法 ・上の年代から降りてきている
・より学びやすく整理された

ご覧になってわかるように、各観点で「増加」「変化」が顕著に現れています。

現場で働いている感覚から言うと、「親世代が学生時代に学んだ英語」の感覚のままでは現代の子どもと大きなギャップが生じてしまうように感じます。

まずは各観点についてよりわかりやすく深掘りしていくので、興味がある内容を中心に目を通してみてください。

授業時間:学習内容が増えるのに変わらず

まずは「授業時間」についてですが、学ぶ内容が大幅に増えていることもあり、「授業時間も大幅に増えるんでしょ?」と思っている方が非常に多いです。

結論から言えば、中学英語の授業時間は「一切変更がない」ので、単純に「時間当たりで学ぶ内容が増えている」ことになります。これは想像以上にハードです。

「増やそうにも増やせない」のが現実

「学習内容が増えるのになぜ授業時間は増えないのか」と疑問に感じるかもしれませんが、「増やそうにも増やせない」のが国側の本音だと思います。

そもそも、日本の中学英語は平成10年、2002年の学習指導要領改訂のタイミングで必修科目となり、それまでは選択科目の中の1つでしかありませんでした。

そして、当時の授業時間数は年間105コマ、3年間で315コマ。対して、2008年の改訂により、これが年間140コマ、3年間で420コマまで大幅に増加。

これまで必修ですらなかった科目を「年間105コマ」増やし、それをさらに35コマ増やした「年間140コマ」まで増加させているわけですから、これ以上コマを入れるのは物理的に不可能というわけです。

したがって、シンプルに「時間当たりで学ぶ内容が増えている」というハードな現実となっています。当然、現場の教員、そして子どもたちの負担も増えているので、この変化にどう対応していくのかが大切です。

学習方針:より実践的な「4技能5領域」を重視

続いて、学んでいく方向性を決める「学習方針」について解説していきます。

今回の学習指導要領の改訂により、中学英語はより実践的な「4技能5領域」をバランス良く学ぶことに重きを置かれています。

4技能5領域
  • 聞くこと:リスニング
  • 読むこと:リーディング
  • 話すこと(やりとり):コミュニケーション
  • 話すこと(発表):スピーキング
  • 書くこと:ライティング

具体的にはこの5つで、「技能」の面から言えば、

「聞くこと、読むこと、話すこと、書くこと」

の4つを学び、「領域」の面で言えば、

「リスニング、リーディング、コミュニケーション、スピーキング、ライティング」

の5つを学ぶ、ようなイメージです。

以下では、それぞれの技能、領域について、学習指導要領の内容をもとに、簡単に解説していきます。

聞くこと:リスニング

ア はっきりと話されれば,日常的な話題について,必要な情報を聞き取ることができるようにする。
イ はっきりと話されれば,日常的な話題について,話の概要を捉えることができるようにする。
ウ はっきりと話されれば,社会的な話題について,短い説明の要点を捉えることができるようにする。

引用:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 – 文部科学省

学習指導要領にて定められている、『技能「聞くこと」、領域「リスニング」』の目標は上記引用の通りです。

話の全てを聞き取る必要はなく、あくまで「必要な情報、概要、要点」を聞き取れれば良いと具体的に明記されているため、完璧なリスニングは求められません。

一方で、「自分の置かれた状況などから判断して必要な情報を把握することが大切」とも明記されているため、単に聞き取るだけでなく、

  • 自分がいる場所
  • 相手との関係性
  • 社会的な状況

このようなことを総合的に判断した上で「必要な情報、概要、要点」を把握することが求められます。

教科書にも、場所や状況に工夫を加えた「シチュエーショントーク」が多く盛り込まれており、これらを考慮して「想像力を働かせた」上で聞き取れるような反復練習が求められると言えるでしょう。

読むこと:リーディング

ア 日常的な話題について,簡単な語句や文で書かれたものから必要な情報を読み取ることができるようにする。
イ 日常的な話題について,簡単な語句や文で書かれた短い文章の概要を捉えることができるようにする。
ウ 社会的な話題について,簡単な語句や文で書かれた短い文章の要点を捉えることができるようにする。

引用:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 – 文部科学省

続いて、『技能「読むこと」、領域「リーディング」』についてですが、目標は上記の通りです。

リーディングについては、以前から力を入れて指導をしていた技能でもあるので、そこまで大きな変更はないと見て良いでしょう。

教科書で言うと、各セクション、ユニットで扱うトピックが変わり、時に手紙やメール、さらには自然環境問題や平和問題など、日常的、社会的な話題を扱います。

こういったものに対応できる能力を身につけられるよう、学校の授業で学ぶ単語や文法を着実に定着させていくことが求められます。

話すこと(やりとり):コミュニケーション

ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うことができるようにする。
イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いて伝えたり,相手からの質問に答えたりすることができるようにする。
ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて述べ合うことができるようにする。

引用:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 – 文部科学省

続いて『技能「話すこと」、領域「コミュニケーション」』についてですが、重要なキーワードに「即興」があげられます。

上記「ア」に記されているように、「簡単な語句や文を用いて『即興で』伝えあう」ことを一番の目標に掲げており、これは明確に「実際のコミュニケーション」を強く意識しています。

そして、最終的な目標に「簡単な語句や文を用いて述べ合う」ことを掲げているため、各教科書も中学レベルの簡単な単語、文法を使って、最低限の日常英会話を身につけられるような構成となっています。

現場で教えていても、筆者が学生の頃よりも明確に「英会話的な表現」が増えていることを感じています。

話すこと(発表):スピーキング

ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うことができるようにする。
イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いてまとまりのある内容を話すことができるようにする。
ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて述べ合うことができるようにする。

引用:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 – 文部科学省

続いて『技能「話すこと」、領域「スピーキング」』についてですが、1つ前の『技能「話すこと」、領域「コミュニケーション」』に比べて「伝えること」「話すこと」にフォーカスしています。

簡単な英語を使って自分の考えを「一方的に伝える(発表する)」ことを第一の目標として掲げ、最終的には「人権問題やICTの普及などの社会的な話題」について伝えられるようになることを想定しています。

ただでさえ、日本人は自己主張が苦手なので、英語で自分のことを伝えることはなおさら難しいです。

とはいえ、これからの社会では言語を問わず、自分のことを周りに伝えられなければグローバル社会に飲み込まれてしまうことは明らかなので、スピーキング能力を中学時代に身につけておくことは極めて重要だと言えます。

書くこと:ライティング

ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて正確に書くことができるようにする。
イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いてまとまりのある文章を書くことができるようにする。
ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて書くことができるようにする。

引用:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 – 文部科学省

最後に取り上げるのが『技能「書くこと」、領域「ライティング」』ですが、こちらもスピーキングと同様に今後重視される技能、領域です。

現代社会はLINEやTwitterなどを筆頭とした、SNSを用いた「文字によるコミュニケーション」の重要性が増しており、「文字によるコミュニケーション」は会話によるコミュニケーションよりも「正確性」が求められます。

だからこそ、以下のような練習の機会が教科書内でも多数設けられています。

  • 気持ちや考えを「整理して書く」
  • 「I think」「I agree」などを使って自分の意見を表明する
  • 「because」「so」などの接続紙を使って主張の理由や根拠を明確にする

書くことは話すこととは違った難しさが求められるので、普段からどれだけ練習できているかが鍵になると言えるでしょう。

中学以降の高校英語まで踏まえると、リスニングやライティングなどの技能が従来よりも求められるようになっています。「長文読解だけできれば良い」といった、大人世代が学生だった時代の「リーディング偏重」の考え方では難しくなってくることは明白です。

単語:最大1.5倍へと増加

このように、中学英語は「技能」「領域」の面で大きな変化を迎えていますが、学ぶ内容が増えれば、当然扱う単語、覚える単語も増えますよね。

結論から言えば、中学生が覚える単語量は「最大1.5倍」へと増加しています。

参考までに、「小中高で学ぶ単語量」の変化を以下の表にまとめてみました。

小中高で学ぶ単語量の変化
小学校 ・1980年代:なし
・1990年代:なし
・2000年代:なし
・2010年代:なし
・2020年代:600〜700語
中学校 ・1980年代:900〜1,050語
・1990年代:1,000語
・2000年代:900語
・2010年代:1,200語
・2020年代:1,600〜1,800語
高校 ・1980年代:1,400〜1,900語
・1990年代:1,900語
・2000年代:1,800語
・2010年代:1,800語
・2020年代:1,800〜2,500語
合計 ・1980年代:2,950語
・1990年代:2,900語
・2000年代:2,700語
・2010年代:3,000語
・2020年代:5,000語

参考:学習指導要領の改訂で大幅増! 英単語はどうやって覚える? 松本茂・東京国際大教授に聞く – 朝日新聞 EduA

ご覧のように、最もわかりやすい変化は「小学校」で学ぶ単語についてで、2010年代までは「なし」だったのが、2020年代に入って600語〜700語へと増加しています。

そして、肝心の「中学校」では、2000年台の「ゆとり教育」にて900語に減らしていたものの、2010年代に300語アップの1,200語まで増加。そして今回の改訂により、2020年代には400語〜600語アップの「1,600語〜1,800語」まで増加しており、これは1.3倍〜1.5倍もの増加に当たります。

そして、この「1,600語〜1,800語」というボリュームは、2010年代までの高校生が扱う単語量と同等ということで、「1世代前の高校生が学ぶ単語の量を中学生が学ぶ」必要が出てきます。

どれだけハイレベル化しているのかがわかりますよね。

ちなみに、高校生も扱う単語量が増えていて、2010年代は1,800語だったものが、今回の改訂により「最大2,500語」まで増えています。

結果的に、小学校から高校までで扱う単語のボリュームは、言うまでもなく今回の改訂で「最大」となりました。2010年代が「3,000語」であったのに対し、2020年代は「5,000語」と1.7倍程度まで増加しているため、大人世代が学生だった頃の感覚とは、大きなギャップが生じることは明らかです。

英文法:大幅な「前倒し」が実施

続いて英文法についてですが、英文法は「大幅な前倒し」が実施されています。

具体的な内容を以下にまとめてみました。

英文法の前倒し内容
中2→中1 ・be動詞の過去形
・過去進行形
・未来形
中3→中2 ・受動態
・現在完了形
高校→中3 ・現在完了進行形
・原形不定詞
・仮定法

それぞれの英文法について、簡単に補足を以下で加えていきます。

上記移行内容の詳細は教科書や問題集によって異なります。学校で使っている教科書がどのように移行しているのか、事前に確認しておきましょう。

中2→中1への前倒し内容

まずは「中2→中1」への前倒し内容ですが、「時制」に関する内容が色濃く反映されています。

従来は中1と中2で「現在、過去、未来」をまたがって学習していましたが、今回の改訂で中1にスッキリとまとまった格好になります。

be動詞の過去形
  • I was a student two years ago.
    (私は2年前、学生だった。)
  • You were a soccer player last year.
    (あなたは昨年、サッカー選手だった。)

be動詞の過去形は、「is/am/are」と学習する現在形のbe動詞の過去の形を扱う単元です。

1年生と2年生で分かれていた従来の形は、指導者目線でも少し教えにくい部分があったので、この変更は素直に評価できると考えています。

過去進行形
  • I was studying English then.
    (私はそのとき、英語を勉強していた。)
  • We were playing baseball at that time.
    (私たちはそのとき、野球をしていた。)

過去進行形は、「be動詞の過去形 + 動詞のing」という形を取り、過去のある時点で「していた」ことを表現する文法です。

従来は中1で「現在進行形」を、中2で「過去進行形」を、それぞれ学習していましたが、これが中1にまとまる形となるので、これもわかりやすい変更のように感じています。

未来形
  • I will read that book tomorrow.
    (私は明日、あの本を読むつもりだ。)
  • It’s going to rain this evening.
    (今夜は雨が降るだろう。)

未来形は、「助動詞will」「be going to」という2つの形で、未来のことについて表現する文法です。これまで中2で扱っていたものが、中1に降りてきました。

未来形が降りてきたことで、「現在、過去、未来」という全ての時制を中1で学ぶことになるため、教える方も、学ぶ方も、理解しやすくなるように思えます。

中3→中2への前倒し内容

続いて「中3→中2」への前倒し内容について取り上げていきます。

ここでの前倒しは、「高校→中3」への移行の影響を受けていて、従来までは中3の4月、5月に勉強していた「受動態」「現在完了形」が中2の最後に降りてきています。

とはいえ、学校や教科書によっては、「受動態だけ中2、現在完了形は中3」としていることもあるので、あくまで参考程度に捉えておくと良いでしょう。

受動態
  • The lunch is made by my mother.
    (昼食は私の母によって作られます。)
  • He was called Ken by everyone.
    (彼はみんなからケンと呼ばれていた。)

「主語が〜されている」と、主語が「される」ことを表現する「受動態」は、受験という意味でも、日常英会話という意味でも、極めて重要な英文法です。

文法の形は「be動詞 + 過去分詞」という形で、構造としてはシンプルで難しくありません。しかし、受動態で初めて出てくる「過去分詞」を覚える必要があり、ここにつまづく子が非常に多いです。

過去分詞は、次に紹介する「現在完了形」、さらに中3で勉強する「分詞による修飾」でも使うので、完璧に覚え切る必要があります。

「中2にやるのが大変」とも考えられますが、逆に「中2のうちから過去分詞に触れられる」とも捉えられるので、この移行についてはポジティブに捉えましょう。

現在完了形
  • 【経験】I have played baseball once.
    (私は野球を1回やったことがあります。)
  • 【継続】My teacher has taught us English since last year.
    (私の先生は昨年から私たちに英語を教えています。)
  • 【完了】The train has just left.
    (電車はちょうど出発したところです。)

続いて「現在完了形」ですが、過去形が過去の1点だけを表現する文法だったのに対し、現在完了形は「過去から今に至るまで」を表現できる点が対照的です。

形は「have + 過去分詞」というシンプルな形ですが、用法が3つあるのが少し複雑。経験、継続、完了の3つの使い方をマスターしなければ、高校受験や高校英語でつまづく可能性があります。

高校→中3への前倒し内容

最後に、「高校→中3」への前倒し内容について取り上げます。

いずれも中3に降りてきていて、難易度も比較的高いです。

現在完了進行形
  • I have been talking with her since this morning.
    (私は今日の朝からずっと、彼女と話をしています。)
  • He has been studying English for two hours.
    (彼は2時間、英語の勉強をしています。)

現在完了形に現在進行形を加えた「現在完了進行形」は、高校から中3へと降りてきました。

現在完了の「have + 過去分詞」に、進行形の「be動詞 + 動詞のing(現在分詞)」をミックスさせ、「have + been + 現在分詞」という形を取ります。少し複雑ですね。

訳し方は、通常の「現在完了の継続用法」に「今もずっとしている」というニュアンスを加えられますが、継続用法とそこまで変わらないと考えても問題ありません。

原形不定詞
  • She lets her brother use her computer.
    (彼女はコンピュータを弟に使わせます。)
  • They helped Yumi do her homework.
    (彼らはユミが宿題をするのを手伝いました。)

続いて「原形不定詞」ですが、不定詞と聞くと「to不定詞」をイメージする方が多いと思います。

不定詞は動詞を名詞、形容詞、副詞など「他の品詞」として使うための文法のことで、to不定詞以外にも動詞の原形を使う「原形不定詞」が存在し、これが高校内容から中3に降りてきました。

ポイントは、文全体の構造が、

「主語 + 動詞 + 目的語 + 原形不定詞 + 原形不定詞の目的語」

となっている点で、文のメインとなる動詞(述語動詞)、そしてその目的語に加え、新たに「原形不定詞、そしてその目的語」という2つの要素が加わる点です。

to不定詞の場合は「to + 動詞の原形」というわかりやすい形がありましたが、こちらは「動詞の原形」が置いてあるだけなので、「不定詞」であることに気がつけない可能性があります。

上記の点を考慮すると、高校で学んでいたことが納得できる難易度の高さですよね。これが中3に降りてきているので、相応の対策が必要になることがわかります。

仮定法
  • 【仮定法過去】If I were you, I would go to Italy.
    (もし私があなただったら、私はイタリアに行くだろうに。)
  • 【仮定法過去完了】If she had studied harder, she could have passed the exam.
    (もし彼女がもっと熱心に勉強をしていたら、彼女は試験に合格できていただろうに。)
  • 【I wish】I wish I could speak English.
    (私が英語を話すことができたらなあ。)

最後に取り上げるのが「仮定法」ですが、これも高校で取り扱う内容でした。

「現実とは異なること」を表現するための文法で、通常の「If(もしも)」を使った表現とは「実現可能性」が異なります。

例えば、上記例文の「仮定法過去」の文章は、「If」の節で「もし私があなただったら」という「現実ではあり得ないようなもしも」を提起しています。

このような「非現実的な仮定」をする場合、「時制を1つ降ろさなければいけない」というルールがあり、これが「仮定法」という文法の本質です。

だから、「私はイタリアに行くだろうに」という文章は「will」ではなく、1つ時制を降ろした「would」が使われている、と考えます。

つまり、現在について「非現実的な仮定」をするなら現在から時制を1つ降ろした「過去形」を、過去についてなら過去から1つ時制を降ろした「過去完了形」を、それぞれ使うことになります。

「現在なのに過去」「過去なのに過去完了」と複雑ですし、表現できることも「実現しないもしも」ということで、全体的に「わかりにくい」部分があるため、これまで高校で扱っていました。

これが中3に降りてきていて、さらにどの教科書でも入試の直前に学習する内容になるので、対策が難しい部分だと言えます。

この章のまとめ
  • 授業数は変化なし。効率良く学習することが大切に。
  • より実践的な「4技能5領域」を満遍なく身につける必要が。
  • 単語量は最大1.5倍に。中1からコツコツ覚えていこう。
  • 高校から一部文法が移行。中1に文法の基礎が集約される格好に。

中学英語の教科書大幅改定に対応する方法

ここからは、中学英語の教科書改訂に対応する方法について解説していきます。

よりわかりやすく理解するために、以下の4つの観点にわけてみました。

いずれも大切なポイントになるので、順番に見ていきましょう。

全般:特別な対策は不要。基本を大切にすることが何よりも大切

これからの英語教育では「4技能5領域」を満遍なく学習することが求められるため、

『「聞く、読む、話す、書く」のそれぞれに合った対策をしていくのは大変そう』

と考えてしまうのも無理はありません。今回の教科書改訂で学ぶ量が増えているので、なおさら不安に感じてしまうものです。

しかし、特別な対策は必要ありません。基本を大切にすることが何よりも大切で、「学校の授業に付いていく」ことで問題なく対応できます。

とはいえ、「学習量が増えているのに授業数は据え置き」という今回の改訂を踏まえると、「学校の授業に付いていくことがそもそも難しい」とも考えられるので、これまでよりも一層、「予習、復習」といった勉強の基本が求められると言えるでしょう。

したがって、家庭学習でコツコツと英語の実力を積み重ねていき、独学での学習が不安なら、塾や家庭教師、通信教育などの教育サービスを利用していくことが大切です。

単語:教科書の新出単語をコツコツ覚える

先述のように、中学英語で学習する単語量は従来の最大1.5倍まで増えており、小学校〜高校までで学習する単語量は最大1.7倍程度まで膨れ上がっています。

このボリュームアップに対応するには、「新出単語が出るたびに覚える」ことが何よりも大切。

参考までに、多くの学校で採用されている「開隆堂」の教科書「Sunshine」を例にとって見てみましょう。

こちらは「Sunshine」の内容紹介資料ですが、本文の左右に「New Words」として、この単元で扱う新出単語がまとめられています。

これが「中学英語で扱う単語」なので、これを出てくるたびに覚えていれば着実に必要な単語を身につけられるので、毎日5分でも良いので「覚える習慣」を身につけましょう。

これだけでテストの点数が10点以上は上がるので、コスパの良い勉強法です。

「単語帳」は必須ではない。あくまで教科書をベースに

保護者から単語について良くある質問が「単語帳は必要ないのですか?」といったものです。

自身の「大学受験時」の体験から、「英単語帳は英語学習に必須ではないか」といった考えを持つ方が多く、読者の方も上記画像のターゲットやシステム英単語、速読英単語、単語王など、いずれかの単語帳を「相棒」として英語の学習を進めたのではないでしょうか?

結論から言えば、中学英語における単語帳は大学受験ほど必須ではなく、「使っても良い」程度に考えておくのがベター。

その理由を以下にまとめてみました。

単語帳が必須ではない理由
  • 使わない、使う気にならない
  • 教科書で十分
  • 学校の授業をフォローできない

最大の理由は「使わない、使う気にならない」という元も子もないものに行き着きます。

そもそも、大学受験生のほぼ全員が英単語帳を使って単語を暗記できるのは「勉強に対するモチベーションが高いから」です。勉強に興味を持たない、あるいは苦手な子にとって、英単語帳とは「辞書」みたいなもので、わざわざ開く気にもなりません。これが現実です。

また、中学英語の英単語は、基本的に「1単語に1つしか意味が割り当てられていない」ので、教科書に出てくるものを覚えていれば十分。わざわざ単語に特化したテキストがなくても、対応できる範囲内です。

加えて、単語帳に出てくる単語は、教科書には対応していません。出てくる順番が全く違うので、定期テスト対策にならない点もイマイチ。

高校入試は内申点が大きく評価されるため、定期テスト対策という点で使えないのは大きなマイナスポイントだと言えるでしょう。

単語のボリュームが増えるからといって、特別なことは何も必要ありません。教科書に出てくる新出単語をコツコツ覚える。ここにフォーカスしてください。

文法:学校ワークで定着を図るのが基本戦略

続いて、「文法」の対策方法について解説していきます。

「英文法」と聞くといかにも難しそうな印象を受けるかもしれませんが、結局のところ文法とは「単語の並び方」に過ぎません。

特に英語は「単語の並び方」が以下のように重要な意味を持ちます。

  • 「主語 + 動詞」と並べれば肯定文(普通の文)になる
  • 「動詞 + 主語」と並べれば疑問文になる
  • 「動詞から始める」ことで命令文になる

このように、並び方だけで文章に意味を持たせられるのが英語の最大の特徴であり、比較的自由に文を作れる日本語との違いに馴染めない子が非常に多いです。

しかし、逆に言えば「並び方さえ覚えれば誰でも文を作れる」のが英語なので、授業で扱う文法さえ正確に覚えてしまえば、安定して点数を取れる「コスパの高い科目」でもあるのです。

したがって、先述のように、今回の改訂により高校の文法が中学範囲に加わりましたが、心配する必要はありません。単語と同様に、学校の授業に合わせてコツコツと、着実に定着させていくことが何よりも重要です。

「ドリル形式」で演習量を増やそう

結局のところ、文法は「覚えること」に行き着くので、「ドリル形式」で定着を図るのが最も効果的です。小学生の頃に足し算、かけ算などの四則演算をドリルで定着させたのと同じことですね。

ドリル形式で学べる教材は、基本的に以下の3つがあげられます。

  • 学校ワーク
  • 学校の配布プリント
  • 市販テキスト

まずは学校ワークや配布プリントを学校進度に合わせて繰り返し進めていき、これで定着が図れるなら他に教材、テキストは一切不要です。

しかし、現場で働いている経験上、この2つの教材だけでは定着まで不十分なので、「ドリル形式の市販テキスト」を合わせて用意しておくと良いでしょう。

学校の教科書に沿った構成としている「教科書ガイド」や、反復練習を繰り返し行う市販テキストなどを購入し、家庭学習で使用すると定着率はグンと上がりますよ。

技能:音読で「読む、聞く、話す」力を伸ばす

最後に「技能」の対策方法について取り上げますが、これは「読む、聞く、話す、書く」という4つを指します。

これら全ては「単語と文法の定着」が前提となるので、まずは先述の単語と文法の対策を参考にして欲しいですが、これらに加えて「音読」が非常に効果的です。

その理由を以下にまとめてみました。

音読が効果的な理由
読む ・英語をそのままの形で読める
・「返り読み」をしないことが何よりも大切
聞く ・音声を意味につなげやすくなる
・自分で読めないものは聞き取れない
話す ・英語を口に出すことに慣れる
・発音やアクセントを意識しやすい

ご覧のように、「話す」こと以外にも、「読む、聞く」という2つの技能において効果が期待できます。

特に重要なのが「返り読みをしない」点で、日本語の語順に慣れ親しんだ私たち日本人は、英語を「後ろから読む」習慣がついてしまっています。

これは「正確に訳す」という点では正しい訳し方なので決して悪いことではありませんが、長文読解をしている最中に全ての文章を返り読みしてしまっては、定期テストや入試問題を制限時間内に解き切ることは不可能です。

だからこそ、「そのままの形で読む(前から訳す)」練習が不可欠であり、音読はこの練習になります。

教科書の本文を繰り返し音読するだけでも効果ありなので、ぜひ試してみてください。

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まとめ

英語の2020年代の教科書改訂は「過去最大」とも言える大幅な変更、ボリュームアップがされているので、ここにどのように対応するのかは非常に大切です。

とはいえ、英語の基本はいつの時代も「単語と文法を覚える」ことにあります。まずは両者を学校の授業に合わせてコツコツと覚えていき、それに合わせて、リスニング、リーディング、スピーキングなどの技能面を鍛えていきましょう。

この記事と合わせて、英語のスペシャリストが「中学英語の変化」について解説している、以下の動画も参考にしてみてくださいね。