「暗記」は学生生活を送るうえで、また試験に合格するためにも大きな課題です。生徒からは、「いまいち自分に合うやり方にまだ出会えていない」「暗記科目は捨てた」といった声がよく聞こえてきます。
その気持ち、手に取るようにわかります。でも、ちょっともったいない。記憶の仕組みを理解して、自分に合う方法を見つけましょう。
今回の記事では、暗記方法の大切なコツと効率の良い暗記方法、さらには具体的な暗記術もお伝えします。
現役講師直伝の「効率重視」の暗記方法
現役講師がお伝えする暗記の最大のコツ、それは「繰り返し」です。
一瞬で何もかもが覚えられる魔法の薬や呪文を期待したでしょうか。残念ながら、そのようなものはありません。少しの努力は必要です。
では、なぜ繰り返しが必要なのでしょうか。その答えは、記憶をする脳の仕組みにあります。
記憶とは
見たり聞いたり、体を動かしたりして、記憶したい対象が脳内に送られると、そこから「ニューロン」という長いひげのような細胞が絡まってできたネットワークを通って、「海馬」という部分に送られます。
ニューロンのネットワークは脳内にあるそれぞれの物事をつなげています。このネットワークを太くしたり、機能を高めたり、新しく作ったすることでできるのが「記憶」です。
ニューロンネットワークをそのように強化するためには繰り返しが必要です。強化することによって、情報を取り入れたり、引き出したりする能力が向上します。
海馬に送られたものはどうなりますか。
短期記憶から長期記憶へ
記憶には短期記憶と長期記憶があります。その違いは海馬で起こります。
日常の出来事や勉強して覚えたことは海馬の中で一度整理整頓され、忘れても良いか、長期記憶に移すかが判断されます。
海馬は命に関わる情報を真っ先に長期記憶に移すので、試験勉強という命には関わらないものは放っておくとすっぽり消えてなくなってしまいます。
たしかに、命に関わらないかもしれないけれども、テストは十分に重要なので長期記憶側に移したいですよね。
その場合、海馬をダマす必要があります。一定期間のうちに同じ情報が何度も入ると、海馬は「こんなに繰り返されるのだから必要な情報に違いない」と、ある意味ダマされて長期記憶に移してくれます。
ニューロンも海馬も繰り返しが大切、ということは、こまめに復習するしかありません。
参考:学習と記憶 – 日本学術会議 おもしろ情報館
参考:医学博士に聞く、記憶力・学習力アップに影響する脳機能「シナプス可塑性」とは? – 東洋大学 LINK@TOYO
参考:「復習4回」で脳をダマすことができる – PRESIDENT ONLINE
こまめに覚える
復習のタイミングを決めてしまうのは大きな一歩です。
特に、最初に覚えた瞬間からなるべく近いタイミングで復習すると時短になります。例えば、学校の授業内容を下のリストのように復習できれば非常に効率的です。
- お風呂の中で、その日の授業を1時間目から6時間目まで思い出す
- 次の日の朝、通学路を歩きながら、昨日勉強したことを思い出す
- 日曜日の午前中、1週間の授業を思い出す
このように近いタイミングでこまめに思い出すことで、海馬が「長期記憶に入れよう!」と判断してくれるようになります。
1時間後に復習すれば「44%時短」になる
「エビングハウスの忘却曲線」という図を見たり、聞いたりしたことがある方は多いと思います。
このグラフは、最初に覚えた単語を2回目に覚え直すときにどれほど時間を短縮できたかを表しています。
具体的な時間にしてみましょう。10分かけて覚えた単語であれば、1時間後に覚え直すと5分36秒で済むのに対し、1か月後だと7分54秒かかっています。復習を先延ばしにすればするほど、覚えるのに時間がかかることがわかります。
この実験は無意味な単語を覚えた場合の忘却曲線を観察したものですから、私たちが覚えるもののように意味があると少し結果が変わるのではないかと考えられます。それでも、1回覚えたものをそのままにしておくと、忘れてしまうのは誰でも身に覚えがありますよね。
つまり、「タイミングよく、こまめに復習すれば効率よく暗記ができ、時間が経つほどもう一回覚えるのに苦労する」ということです。
参考:エビングハウスの忘却曲線とは? 本来の意味やビジネスへの賢い活用法を解説 – THE OWNER
特に大切なのは思い出すトレーニング
復習をするときに特に大切なのは「覚えること」ではなく「思い出すこと」です。
これはリトリーバルトレーニングと呼ばれます。
リトリーバルトレーニングはこれまでのどんな勉強法よりも一番得点率が高いことが様々な研究で証明されています。
このトレーニングでは、まず教科書や単語帳を見ないで思い出すことが大切です。それから、覚えているかをリストを見て確認する、忘れてしまっているものに集中してリストを見直す、という順番で復習を行います。
これが効果的なのは、生徒が自分で脳を動かす必要があるからです。脳を動かすと、今まで習ったことと新しい知識をつなげる力が強くなります。
参考:記憶力を鍛えるのは入力じゃなくて出力です – WEDGE Infinity
参考:Ten Ways to Use Retrieval Practice in the Classroom – EducationWeek
目で見て覚える
「暗記をするときには、とにかく手を動かしましょう」と言われたことがあるかもしれません。しかし、どの方法が一番しっくりくるかは生徒によって様々です。
先ほど脳の仕組みを考えたように、情報の刺激は目、耳、運動などの場所を経由してニューロンネットワークに送られ、記憶組織に到達します。つまり、刺激はどこから来ても構わないのです。
書くより見る方が効果的なケースも
例えば、私たちのオンライン家庭教師サービス「まなぶてらす」の主宰である坂本は「見るだけ暗記法」を提唱しています。
- 暗記リストを30秒じっくり見て覚える。
- その後の1分でテストをする。
- その日の暗記リストで満点が取れるまで①と②を繰り返す
この学習法で小学3年生から6年生までの85人が10字の漢字を覚えるのにかかった平均時間は、2分43秒でした。
漢字の書き取りが苦手な生徒には学習時間も短くなり、ゲーム感覚でできる画期的な方法です。もちろん英語や社会など他の強化にも応用できます。
参考:漢字は何度も書かずに「見て覚える」「1分テスト、30秒暗記」繰り返し10文字を3分で – 朝日新聞 EduA
エピソードを添える
記憶の種類の一つにエピソード記憶があります。エピソード記憶は、一言で言えば「思い出」です。例として、筆者の思い出を少し挙げてみます。
- 小さい頃、いとこにウサギのぬいぐるみを取られて悲しかった記憶
- 初めての釣りで触ったアジの感覚
- 学芸会でドキドキしながらセリフを言った経験
思い出は復習しませんよね。でも、忘れません。一発で覚えられるんです。これを応用できればとっても効率的ですね。
覚えたいキーワードに何かのエピソードをつけましょう。ストーリーでもダジャレでも、何かしらの手がかりを作るんです。
さらに、この仕組みには脳内物質も一役買っています。新しいものに出会い、それに興味を持つとき、海馬から「シータ波」という脳波が出るといいます。シータ波が出ているとき、情報伝達の効率がアップします。
また、私たちが何かに注目すると脳が興奮して「ノルアドレナリン」という脳内物質が出ます。この物質が脳の中に出ると、ニューロンネットワークが作りやすく、記憶が定着しやすくなります。
つまり、思い出のように、興味を持ったり注目したりして積極的に関わりを持つと、脳が働きやすく、記憶しやすくなるのです。
参考:学習に大切なポイント – 日本学術会議 おもしろ情報館
例えば、筆者は高校生の頃、文学作品と著者を覚えなければならず、田山花袋(たやまかたい)の「蒲団(ふとん)」という作品を覚えるときに、母と「かたいふとんはいやだよねー」と言いながら覚えました。今でもこの瞬間を鮮明に思い出せます。
友達や家族、先生と一緒にワイワイ覚え方を考えながら取り組むと、定着がとっても早くなります。人と話すこと自体もエピソードになりますよ。
具体的に、英単語の覚え方を例にとって考えてみましょう。
成り立ちで覚える
英単語も漢字のように二つの意味が重なってできているものや語源がはっきりしているものがあります。
例えば、broadcastとその意味、「放送する」を覚えましょう。broadは広い、castには投げる、という意味があります。電波や番組を広い範囲に投げる、というところから、「放送する」とつなげることができます。
すでにある日本語から覚える
カタカナになっている単語から連想するのもいいですね。
今度は、containという単語の「意味:含む、発音:コンテイン」を覚えましょう。イメージするのは「コンテナ」船。たくさんの四角いコンテナが積まれている様子が目に浮かびますか?その中には何が「含まれて」いるんでしょうか?
覚えましたね。
ダジャレやストーリーを作って覚える
ダジャレや謎のストーリーを作るとなぜか頭にスッと入ってきます。
例えば、acceptには「受け入れる」という意味があり、発音はアクセプトです。では「悪(あく)をセプッっと受け入れる」という謎のストーリーと、いい人だったのに突然悪者になったアニメのキャラクターを頭の中にイメージしてください。
「セプッと」ってなんだ?と突っ込みをいれられたら、もう次の瞬間には覚えていますよ。突っ込みはとても良い刺激なので、どんどん突っ込んでいきましょう。
わざとカタカナ読みして覚える
これは発音とつづりがあまりにも合わないときに、みなさん一度は試したことがあるのではないでしょうか。実はこれ、ネイティブもやっています。
例えば、restaurantをわざわざ「れすたうらんと」と読んだり、Wednesdayをわざわざ「うぇどねすでぃ」と読んだりすると、なんだかんだでつづりと意味が完璧になります。発音は別にちゃんと確認しておいてくださいね。
画像検索して覚える
単語をGoogleの画像検索してみると、意味の画像が出てくるので単語にイメージをつけやすくなります。
例えば、anxiousを画像検索するとこんな画像が出てきます。
不安でいっぱいな人たちが頭から離れなくなるでしょう。まさに、anxiousの意味は「不安な」です。
暗記は「プロに任せる」のも1つの手段
暗記は根気とコツが必要です。
自分に合った暗記法を探したり、習慣化するまでには時間がかかります。それを生徒が一人で何の助けもなしにするには心が折れてしまうかもしれません。
そういう時には、一度プロに任せてみましょう。
「暗記ができない」と悩む子は多いが…
暗記ができないと悩む理由は、先が見えず、手段を知らないからかもしれません。
自分なりに頑張ってみても、1つ覚えたと思ったらすぐに忘れてしまったり、後から後から覚えなければいけないものが増えたりします。
また、暗記法を学校で教えてもらえることはほぼなく、自分たちでどうにかしなければいけませんが、糸口を見つけるのにも一苦労です。
「頑張って覚えて」と言われてしまいがち
それに加えて、大人たちは「とりあえず頑張って覚えて」と言いがちです。
うまく自分にあった暗記法を見つけられる子はラッキーですが、ただやみくもに覚えようとしたり、どんどんやる気がそがれる子もたくさんいます。
そんな生徒には論理的な暗記の仕方や種類を知っている人がそばにいて、ぴったりの暗記法を提案してくれると最高ですね。
「暗記専門授業」で暗記のコツを押さえよう
とはいっても、丸々1コマを暗記に付き合ってくれる先生なんているんでしょうか。
オンライン家庭教師サービス「まなぶてらす」にはいます!
まなぶてらすの「暗記レッスン」がおすすめ!
まなぶてらすには「暗記レッスン」というユニークな指導分野があります。ぜひ講師検索画面で「暗記レッスン」にチェックを入れて一緒に暗記をしてくれる先生達を探してみてください。
英単語ごとに意味を考えながらじっくり定着させるのが得意な先生や、メモリーツリーの使い方を教えてくれたり、特別な暗記ゲームを用意している先生もいます。
まだ会員でない方は下のボタンから会員登録をすると、先生達のスケジュールが見えるようになります。初回授業分のポイントももらえますよ。
隠れた一番の敵は思い込みかも?
ここまで書いてきましたが、実は一番の敵は自分の「暗記が苦手」という気持ちかもしれません。
廣津留真理著「成功する家庭教育 最高の教科書」(講談社)の暗記脳について書かれた節には、「親に「この子は暗記が苦手」と言われると、あっという間に落ち込んでモチベーションが下がり、学習意欲がなくなってしまう」と書かれています。
親に言われなかったとしても、自分で「できない」という思い込みを作ってしまっているケースもよくあります。
まずはリラックスをして、その思い込みやネガティブな感情を一度脇に置いておきましょう。ちょっとやってみて飽きる前にやめる、くらいで十分です。
それでもなんだかうまくいかなかったら、まなぶてらすの先生の力を借りましょう。お手伝いする準備はできています。