こんにちは、まなぶてらす講師 いのうえ です。
中学生の数学を教えています。
今日は芳沢光雄先生の著書「AI時代に生きる数学力の鍛え方」をご紹介したいと思います。
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芦沢先生は長年数学教育に携わってこられ、円周率が3になったり、私立文系入試から数学がなくなったりした数学軽視の時代にも数学教育の重要性をずっと訴えてこられた方です。
当書では数学軽視が生み出した、解き方を理解せずにただ暗記して答えを求める暗記数学の問題点を例を挙げて指摘し、その対極にある解き方を理解して数学を学ぶことで応用力や発想力などの考える力が養われることを述べて、その重要性を説かれています。
2桁同士の掛け算までしか教えなくなったことで3桁同士の掛け算が出来ない小学生が増えたことや、割合を「くもわ」で教えられたことで割合の計算が出来ない大学生が散見されるようになったことなど、数学軽視の弊害はいろいろなところで起きています。
その一方で、AI時代に進んでいく中、世界的な数学の重要性の高まりを受けて、2019年の文科省と経産省のレポートでは第四次産業革命を主導して先へ進むために欠かすことの出来ない3つの科学として「第一に数学、第二に数学、そして第三に数学である」と述べられています。早稲田大学の文系入試で数学が復活するなど、近年になって数学教育の重要性の理解が広まり、芳沢先生の長年の主張が正しく評価されるようになってきたことは大変喜ばしいことです。
当書から私は大変多くのことを学べましたが、それに加えて、私が自分のレッスンに取り入れているのと同じことがいくつも書かれていたことが大変嬉しく、これまで以上に自信を持ってレッスンに取り組めそうです。
以下に同じだったことをいくつか紹介します。
”綺麗な数字“ばかり扱うのはよくない。
2と4など簡単に割り切れる数字を使った問題だと、生徒は式を立てたり、きちんと変形することをしないでいい加減に解いてしまうので、7と8など割り切れない数字の問題になると途端に計算ミスをしたり全く解けなくなったりする。生徒が解き方を理解したら簡単に計算できない数字を混ぜることで、きちんとした解き方に誘導することが出来ます。
数学学習で身につく「見直し力」
計算問題を解いた直後に見直しをすると自分の解答をなぞってしまってミスを発見しにくいので、他の問題を解いて時間を置いてから見直した方がミスを発見しやすい。他にも概算による大雑把な計算でミスを発見するなど「見直し力」はとても重要。山の高さが3mになったらおかしいと気付いてやり直せることが大事。ミスをしても見直しで発見して終了までに直せば、それはミスではありません。
数式を文章にして論述の力をつける
文章題を解いた数式は、問題を解くプロセスを数字や演算子などの数学の記号を使って表した文章なので日本語に翻訳できる。 生徒が問題を解き終わったら数式で書いた解答を日本語に翻訳してもらうと、よく理解しないで解いているところは日本語に上手く訳せないので、自分が理解してないところがよく分かって理解が深まります。
最後に、私がレッスンで一番大切だと思っていることもしっかり書かれていました。
教える側の対等な態度
およそ子どもたちに物事を教える大人としては・・・、とくに「説明する相手を思う心」が大切である。
個別レッスンでは生徒、保護者、講師がお互いに相手のことを想って、同じ目標に向かって一緒に頑張れることが一番大切だと思っています。それが出来ていれば成績は自動的に上がります。宿題してくれてありがとう、教えてくれてありがとう、一緒に勉強してくれてありがとう、そんな感謝のやりとりを出来ることが大切です。一緒に頑張って、きちんと成果が出て、一緒に喜びを分かちあえることが私が最もやりたいことです。その上でいただける感謝のお言葉は、私にとって頂戴するレッスン費と同じくらい価値のあるものです。
AI時代にも通用する、人間が持っている最も強い力は「相手を想う心」ではないかと思います。