まなぶてらす講師の「うえむら」です.
2020年6月21日(日)の夕方,日本各地で部分日食が起こります.日食という現象を知らない人は少ないと思いますが,実際に観察した人は多くはないのではないでしょうか.私は,10年強,地学の教員をしていましたが,それでも皆既日食が運良く1回,金環日食が1回,部分日食は2回くらいでしょうか.
天文イベントは,それほど頻度もなく,化学や生物のように実験室内で何度も実験できません.頭でわかっていることと,実際に経験することには差があり,特に,地球や宇宙,生き物といった自然そのものは経験してみないとわからないことが多くあります.今回の部分日食は,日曜日の夕方!晴れて太陽が出ていれば,日本全国で見ることができます.(アフリカからアジアにかけての一部の地域では金環日食となります)
生徒向けにも日食の観察会を行ったことがありますが,本物を目の当たりにした生徒の多くは,すごかった!本当に欠けてた!と言ってくれます.程度の差こそありますが,おおよそ感動してくれます.この経験を通して,理科や自然に興味・関心が高まることもあります.この機会に,子どもたちと空を見上げてみてはいかがでしょうか.ここでは,部分日食の仕組みと今回の基本情報,そして,観察するにあたっての観察方法と注意点をお話しします.
特殊なフィルターを使用してカメラで撮影した日食
部分日食って?
日食は,月が地球と太陽の間に入って太陽の光をさえぎり,地球に影を落とすため,地球上では太陽が欠けて見える現象です.皆既日食は,その中でも月が太陽をぴったり隠してしまう現象で,地球から見た太陽の大きさと月の大きさが同じであるため,うまく隠れてしまいます.地球に比較的近い月と,月に比べれば遠くにある太陽が,偶然にも地球からほぼ同じ大きさに見えるのは,とても不思議でおもしろい事実です.今回は,ぴったりとは重ならない部分日食ですが,遠くからやってくる太陽の光を,月がさえぎっていることをイメージできると,より一層,ふしぎな天文現象であることがわかるのではないでしょうか.
屈折望遠鏡を使用して投影板に映した部分日食の様子
部分日食(6/21)の基本情報
部分日食が見られるのは2020年6月21日(日)夕方です.下の図は,国立天文台天文情報センターが発表している,東京での空の見え方です.大まかなイメージを持つために参考にしてください.夕方,太陽が低いところで部分日食が起こるので,西側に山や建物がないような視界が開けている場所,夕日が見れるような高い場所を探して観察してみてください.なお,場所によって,時間や高度,欠け具合も微妙に異なりますので,以下の国立天文台のウェブサイトを参考にしてみてください.
引用:国立天文台 天文情報センター ホームページ
https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2020/06-topics03.html
日食を観察するときの注意点
日食観察の注意点は,直接,肉眼で太陽を見てはいけないということです.レンズが入っている望遠鏡や双眼鏡で太陽を見ることはもちろん,裸眼で見ることもよくありません.以下の点に注意しましょう.
- 絶対に太陽を直接見てはいけません.比較的暗い金環日食の時でも危険です.
- 曇りの場合も,雲の厚さにはムラがあるので,直接見るのは危険です.
- 市販されているような専用の日食グラスなどを使いましょう.(サングラス,下敷き,CD,すすガラスなどは危険です)
- 日食グラスは取り扱いに注意し,傷や破れがないか,直前に確認しましょう.
観察方法~日食グラス
最も簡単な方法は,書店や家電量販店で売られている日食観察プレートや日食グラスを購入することです.日食グラスを使う場合は,500~2000円程度で販売されています.どれがよいかは店員に聞いてみてください.観察するときには,日食グラスをつけてから太陽を見るようにし,見るのをやめてから外すようにしてください.日食グラスをしていても,長時間,見続けることは目に負担がかかるので,時々,目を休めながら観察しましょう(数分以上見続けないこと).グラスと双眼鏡や望遠鏡の組合せは,フィルターでは防ぎきれなくなるので危険です.
観察方法~ピンホール・木漏れ日
望遠鏡などの場合は,投影板というものに投影して観察します(上から2つ目の写真).一方,身近なものや安価なものを使う方法もあります.例えば,紙に小さな穴を開けて,別の紙などに日食時の太陽像を映すと,ピンホールカメラの原理で欠けた太陽像を観察できます.ピンホールの穴の大きさ(0.2,0.5,1,2mm…)や,投影する紙との距離を変えて,太陽像の大きさや明るさがどう変化するか,事前に確認しておきましょう.日食が始まったら,時間毎にかけていく様子が楽しめますし,デジカメで投影されたものを写真に撮ることもできます.ただし,今回は,夕方で太陽の光も弱くなっていくので,あまりはっきりと写らないと思います.でも,この方法は,次の機会の日食にも使えるので,やってみるとよいともいます.
4×10個の丸い穴を開けたもので太陽像を紙に映しました.
わざわざピンホールを空けなくても,適当な穴さえあれば欠けた太陽の投影に使えます.例えば,切手シートの穴や麦わら帽子の隙間,穴あきお玉の穴,塩コショウ容器の蓋の穴,滑り止め防止シートの穴なども使えます.家の中にあるものや100円ショップで売っているもので準備ができます.小さな穴が開いているものを探してみてください.
自然にあるものでもピンホールの原理が関係しているものがありま・・・木漏れ日です.木漏れ日は,葉と葉の隙間がうまくピンホールの役割を果たしていれば,実は丸くなっています.木漏れ日は見たことがあっても意識しないと気づきません.その丸い形は太陽なのです.ということは…やはり日食時には欠けます.
一般的によくある街路樹ですが,木漏れ日が落ちています.
日食時の木漏れ日を撮影.わかりますか?
日食時の木漏れ日に白い紙を置いてみると…欠けているのがわかりますか?
おまけ:日食観察のオリジナル記念写真を撮ろう!
先ほど,紹介したピンホールを使って,自分オリジナルの記念写真も撮れます!ピンホールは小さな穴が開いていればよいので,紙と穴があれば作れます.紙に書いた文字や日付に沿って小さな穴を空け,欠けた太陽を投影すれば,素敵な日食記念メッセージができます.下の写真は,2017年のアメリカの皆既日食で,メモ用紙にシャーペンで穴をあけて作ったものです.
” 2017.8.21 MADRAS,OR ” (2017年8月21日 オレゴン州マドラス)
今日は,部分日食の概要と観察方法,注意点などをまとめてみました.もっと詳しく知りたい人は,理科実験講座などでより詳しく紹介も致します.それでは,太陽が顔を出してくれて,皆さんが天文イベントを少しでも楽しめたらと願っています.