こんにちは、まなぶてらす講師のしゅうとです。
子供の字が汚いと「字は丁寧に!キレイに書きなさい!」とついつい怒鳴ってしまいがちです。
大人になっても字を見られる機会はそう少なくありません。
子供みたいな字を書いてる大人を見ると、内心引いてしまうのが本心ですよね?
そんな大人になって欲しくない!という思いから、字をキレイに書かせる指導は決して間違っていません。
しかし、もしかするとその字は子供の特性からきているのかもしれません。
子供が字をキレイに書けない原因について考えてみましょう。
まずは「字は個性」と考えて、肯定してあげましょう
お手本通りの字を目指す場合、「トメ・ハネ・ハライ」と細かくみる必要がありますが、親心としては「せめて読める字を書いてほしい」というのが心情かと思います。しかし、それすらもできない「読めない字」を書くため、悩まれていると思います。
そんな字ではダメ!と否定的な考えを持ってしまうと、同じことを何度も言って、言う通りにやらずイライラしてしまい、言葉が雑になり、指導の効果を下げてしまう可能性があります。子供は否定的な言葉を聞き入れない傾向があるため、言葉が届かず、聞き流されてしまい、必要以上にストレスを感じてしまう可能性があります。
よって、「この子の字はこういう特性を持っているんだ」と個性として認めてあげることで、親のメンタルの負担を軽減することが大切です。イライラしては良い言葉も無駄になってしまいますから、まずは冷静になれる考えを持ちましょう。
ここで、いくつかの事例を元に、何が原因なのかを考えてみましょう。原因も様々ですが、今回は4つの事例「①キレイに書こうと思えば書けるし」「②だってキレイに書いてるもん」「③自分が読めたら良くない?」「④数字が汚くて計算ミスしちゃう」について考えていきたいと思います。
事例①「キレイに書こうと思えば書けるし」
子供に「字をキレイに書きなさい!」と注意すると「キレイに書こうと思えば書けるし」と言い訳をされ、「だったら最初から書きなさい!」と返してしまう会話は少なくないと思います。
字が乱れてしまう原因として、一度に複数の動作をするのが苦手な可能性があります。問題を解く時には「読む、聞く、情報を整理する、回答を考える、言葉でまとめる、字を書く」といったように、脳が同時に複数のことを処理しています。よって、子供がいう通り、字をキレイに書くことだけに集中すればできるが、問題を解く際に脳の処理能力が分散してしまい、字を書く能力が低下することで乱れている可能性があります。これは意識的に字をキレイに書くことができるが、無意識的に字をキレイに書くことができない状態と言えます。
例えば、サッカーのシュート練習では上手くできていたが、試合になると点が決められない。といったことも、試合では、ドリブルをしながら、相手をみつつ、コースを見極めて、タイミングを図ってシュートを打つ。といったように、複数のことを脳が瞬時に処理をするために、シュートを行うことの精度が下がってしまい、練習通りのシュートが打てないことが、原因として考えられます。
改善方法としては、一つひとつの処理を別々に練習することで身体に覚え込ませる方法があげられます。何事もそうですが、いきなり複数のことを同時に行えるわけではありません。何度も反復練習をすることで「無意識にそれができる」という状態でなければ、シュートを決めることも、問題を解くことにも集中できません。1つのことが無意識に出来るようになれば、さらに2つのことをそれぞれ同時に行う練習をして、3つ4つと増やしていくことで、シュートが決まったり、問題が正解したりするようになります。
事例②「だってキレイに書いてるもん!」
本人の中ではキレイに書いているつもりでも、大人からみると汚い字に見えて「キレイに書きなさい!」と注意すると、「キレイに書いてるもん!」と返答されるケースがあります。この場合、視覚的・感覚的な原因があげられます。人間の脳はいい加減で、なんとなくとして認識する傾向があります。錯覚に見える絵はまさにこのいい加減さを利用したものです。このケースも同じような現象が起こり、普段見ている教科書の字と、自分で書いた字に対する捉え方に原因があるのかもしれません。
また、自己評価と他者評価の差が大きいことで、自分の字を見られたくない。字を書きたくないといったコンプレックスを生み出してしまうリスクがあります。似顔絵が苦手な人がオバケみたいな絵を描いて「えー!?なにこの変な絵!」と驚かれると「もう描きたくない!」と人前で絵を描くことを拒否することと同じ事象が字でも起こってしまうということです。
さらに、自分ではキレイに書いたつもりの字を否定されてしまうことで、心の壁を作ってしまい、聞く耳を持たず、かえって言葉が届きづらくなってしまうケースもあります。言われ慣れてしまうと効果が薄れてしまって、親のストレスだけが溜まってしまうこともあります。
この場合、字のどの部分が汚く見えるのか、なぜ汚い字に見えるのか、正しい字を横に並べて、修正箇所に印をつけてあげて改善を図りましょう。汚くなる主な原因として、字のバランスが悪かったり、横長な字になってしまうケースが多いので、汚い字は漢字練習帳を活用して、四角の枠を意識して練習しましょう。
ただし、あまりに細かく指導をすると、字を書くこと自体が嫌いになって、勉強への意欲が薄れる可能性があります。絵は自由にのびのび描いている方が楽しかったりしますよね?同じように字ものびのびと書いてもらいましょう!親のメンタルのコントロールを優先して、心が穏やかな時に「ここはこう書いたほうがキレイに見えるよ?」と指導するくらいの頻度でちょうどいいのかもしれません。
事例③「字は自分が読めたらよくない?」
本人が字をキレイに書くことの重要性や優先順位が低い、そもそも気にもしていないケースです。字をキレイに書く正当性を唱えても、字をキレイに書くことの面倒さから、自らの字を正当化するためにこの考えに至っている可能性があります。
また、頭の回転が早く、思いついたことや回答を早く書きたいことが優先されて、字が汚くなってしまう傾向もあるようです。早く書きたい理由として「早く宿題を終わらせてゲームがしたいから!」というケースも少なくありません。
よって、いくら他人から指摘されても、正論を投げかけても、字が汚いことでテストの点が取れなくても、それらの優先順位が低く、気にしていないので影響を受けません。例えば「エスカレーターは歩いてはいけません!」というルールも「別に階段と変わらないから危険じゃないよね?」とルールの優先順位が低いと、急いでいればエスカレーターは歩きますよね?「字が汚くても読めたらいいよね?」は同じ感覚に近いということです。マナーやエチケットのように、本人が気にならない以上、こちらがいくら指導をしても、根本的な解決にはなり得ません。
改善方法はショック療法的なものが効果的です。先程の例でいうと、エスカレーターを歩いて転けて骨折をすれば、「エスカレーターを歩くのはもうやめよう・・・」となりますよね?ですが時間が経てば骨折は治って痛みを忘れます。そしてまたエスカレーターを歩いて転けて骨折するを二度三度繰り返すと、もうエスカレーターを歩くことが恐怖で歩きませんよね?
このように何度も痛い目を見ると学習し、無意識に注意するようになります。よって、字が汚いことが原因で、本人が損をする体験や経験をすることを待ちましょう。字をキレイに書くことの重要性や優先順位が上がらない限り、根本的な改善はできないと思われます。(例えば、学校の授業で黒板に字を書いて、クラスの友達から字を笑われる。など)
「エスカレーターは歩くと危ない」と張り紙をしておくように、字をキレイに書かないと損をすることを唱え続け、子供の中に言葉の種をまいておき、花さく瞬間を待つようなスタイルが、親のメンタルを維持した現実的な指導法かと思われます。
事例④「数字が汚くて計算ミスしちゃう」
数字が乱雑で、計算ミスを頻発するケースもあります。脳内の計算処理スピードに書く速さが追い付かず、脳内で計算が済んでいるにも関わらず、筆算を丁寧に書くように言われることで、逆にまちがえてしまう場合もあります。
計算の早い男子(頭の回転が早い子)に多く見られる傾向で、この場合は、数字が汚いことは個性として一旦認めてあげましょう(笑)あまりに字を矯正することは、他のせっかくの能力を押さえつけてしまうことになりかねないので注意が必要です。
また、字をキレイに書かせるのはなく、かっこいい字や芸術的な字を書くように指示すると、右脳が発達している子は思わぬ才能を開花するかもしれません。その方が「正しい字」ではなく「読める字」に繋がる可能性があります。
まとめ
とにかく、親の役割としては「キレイに書きなさい」を様々な角度から唱え続けることに尽きるように感じました。もちろん、キレイに書くことの重要性や理由も伝えることも忘れずに。身体や脳が発達し、手先が器用になってくれば、自ずと字のバランスも良くなる傾向もありますので、長期的な視点で観察して、あまりストレスとして抱え込まないようにしましょう。
このように、長期的に、持続的に言うためには、親のメンタルのコントロールが第一のように思います。冷静に、口うるさく言い続けて、いつかその言葉が花咲く瞬間を楽しみに待ちましょう^^