こんにちは、まなぶてらすです。
今回は、語彙の学習に関してのお話です。
言語科目(国語 英語 古文 漢文)では、語彙力が非常に大切な読解力の糧になっていきます。
これは、多くの受験生も無意識のうちにその重要性に気付いているようで、暇さえあれば単語帳を片手にしている学生も多いのではないでしょうか。
ちょっとした隙間時間にも、学習をしなければ終わらないほど記憶量が多い語彙の学習ですが、学習するさいには、覚えておいていただきたい原則があります。
それは、「9:1」の原則です。
人間は、日常的に言葉を操ります。その言葉はおおよそ「9:1」の原則で脳みそに蓄えられているのです。
つまり「読めばわかる&聞けばわかる語彙」が9だとすれば、「使いこなせる&書ける語彙」は1だと言われています。
例えばここで以下の例文を読んでみてください。
<引用開始>
内供が鼻を持てあました理由は二つある。
一つは実際的に、鼻の長いのが不便だったからである。第一飯を食う時にも独りでは食えない。独りで食えば、鼻の先が金鞠(かなまり)の中の飯へとどいてしまう。そこで内供は弟子の一人を膳の向うへ座らせて、飯を食う間中、広さ一寸長さ二尺ばかりの板で、鼻を持上げていて貰う事にした。しかしこうして飯を食うという事は、持上げている弟子にとっても、持上げられている内供にとっても、決して容易な事ではない。一度この弟子のかわりをした中童子(ちゅうどうじ)が、嚏(くさめ)をした拍子に手がふるえて、鼻を粥(かゆ)の中へ落した話は、当時京都まで喧伝(けんでん)された。
けれどもこれは内供にとって、決して鼻を苦に病んだおもな理由ではない。内供は実にこの鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんだのである。
池の尾の町の者は、こういう鼻をしている禅智内供のために、内供の俗でない事を仕合せだといった。あの鼻では誰も妻になる女があるまいと思ったからである。中にはまた、あの鼻だから出家したのだろうと批評する者さえあった。しかし内供は、自分が僧であるために、幾分でもこの鼻に煩される事が少くなったと思っていない。内供の自尊心は、妻帯と云うような結果的な事実に左右されるためには、余りにデリケイトに出来ていたのである。そこで内供は、積極的にも消極的にも、この自尊心の毀損を快復しようと試みた。
「鼻(芥川龍之介)」より抜粋
<引用終了>
この文章は読めます。しかし、「自分自身で使いこなせるか?自分でゼロから書けるか?」と言われるとそんなことはないですよね。
・喧伝
・幾分
・毀損
このあたりの言葉は意味こそわかる(または、推測できる)状態ですが、使いこなせるかというと微妙です。
また、
・金鞠の中へ届く
・嚏(くさめ)をした
このような言い回しは、言葉を知らなくても、だいたい話の文脈でなんの話をしているかは推測がつきます。(ex嚏(くさめ)をした=くしゃみをした)
というように、日常的に読む分には問題ない語彙は人間はかなり知っています。
一方、ゼロから書くことができる語彙や使いこなせる語彙はそう多くはないです。
よって、「9:1」の法則が成り立つわけです。
これは英語においても同様です。
スペルは書けないけど、読めばわかる言葉って多いですよね。
MacDonaldっていきなり書けるかは微妙ですが、読めばマクドナルドだとわかり、意味の把握も可能です。
受験勉強は、この「読めればいい語彙」と「書けなければいけない語彙」の区別が大切です。
上手い具合に成績が上がらない学生さん特徴として、
「書き取り信仰」
があげられます。
とにかく「書く」ことで覚えようとします。
そもそも「覚えた」と「書いたかどうか」という因果関係は非常に希薄です。
友達の名前を書いて覚えようとしましたでしょうか?
校歌を歌えるようになるために歌詞の書き取りはしましたか?
というように、そもそも「記憶×書き」は相性が良くないです。
話を戻しますと、
”読めればいい語彙をひたすら書いて覚えようとしてませんか?”
ということですよ。
国語でも英語でも
「知ってればよい語彙」「読んで意味がわかればいい語彙」が全体の90%を占めます。
特に英語に顕著です。
英語は2000語暗記することが求められます(難関大の場合もっと)が、そのうち、完璧に書けなければいけない語彙は多くても600ですし、300くらいがちょうどよいです。
国語も同様で、漢字の書き取りでの頻出を集めれば大学受験でも300語より少ないです(それ以上は費用対効果が悪いからあまりやらないほうがいい)。
このように、受験においては、書くことができる必要がある語彙はそもそも少ないのです。
にもかかわらず、ひたすら書いて覚えようとすると非常に効率が悪い。
おすすめの学習手順を最後に書いて終わります。
①「知っている・読めばわかる」という状態に記憶する(手段:音声)
②「書くことが求められる語彙」を練習する(手段:カードと書き取りの組み合わせ)
まず、知っているという状態を作るのには、音声が有効です。英語であればCD教材が充実しています。このCDで知っているという状態を作ります。音声は数千単位の記憶項目を処理する際に便利なツールです。
次に、本当に重要な語彙だけが載っているコンパクトな単語帳や問題集で、重要な語彙を洗い出し、それらを覚えていきます。
本当に重要な語彙が載っているコンパクトな問題集=ズバピタなどのカード式の問題集
(ポイントは既製品のカード教材を買うことです。自作は効率悪いですので可能な限り避ける)
です。カード式の問題集は200~300枚にまとめてくれていますし、重要なもののみを高回転で記憶作業することができます。カードでどんどんめくって白紙の紙に書けるか試していきます。
だんだん覚えてきたら、頭の中で書けるかイメージします。
記憶作業は「密度 スピード 量」が鍵です。これをマックスできる記憶作業をつねにどの科目でも展開していけば記憶量はどんどんあがっていきます。
◎ツールの特徴
・音声=数が多いものをざっくりと覚えるのに向いている
・カード=数が少ないものを正確に覚えるのに向いている
こういった特徴から上記の学習プランがおすすめです。
以上が今回の内容です。